近年、大人だけでなくお子さんのめまいも増加しています。
従来、お子さんには稀な病気とされていましたが、生活環境が変化したためか、10歳以下のお子さんにも時々見られるようになっています。
通常、お子さんのめまいは大人とまったく異なり、さらに新生児や乳幼児そして学童期では、めまいを起こす病気や症状が異なります。
また、小さいお子さんはめまいを理解できませんから、「めまいがする」と訴えることもありません。
そこで、お子さんのめまい、特に乳幼児のめまいは見つけにくく、また、原因がはっきりしないことも多いという特徴があります。
めまい感を伝えることができるのは、4~5歳ころからと言われています。
それより、小さなお子さんの場合は、「他と比較して、なかなか一人立ちができない」とか「すぐに転んでしまう」といったことでご両親が気づくことが多いと言えます。
とはいえ、発達が少し遅れているだけという場合もあるので、症状を訴えられないお子さんの診断はとても難しいのです。
めまいの原因となる病気はたくさんあり、さらに、新生児期・乳幼児期・学童期によって病気が異なるので、医師であっても診断が難しいとされています。
そこで、病院を受診しても、対症療法で済まされてしまうことも多々あります。
しかし、3~4歳のお子さんで注意が必要なのは、3~4歳は脳腫瘍(のうしゅよう)の好発年齢ということです。5歳になったばかりのお子さんが、転びやすく、時々吐いたり頭を痛がるので眼振検査をしたら、眼振が認められ た……そこで、CT検査を行ったら「小脳腫瘍」が見つかったということもあり得ます。
その「めまい」が、どんな病気に起因するものかは、まず、母親からの入念な聞き取りを含めた問診から始まり、年齢相応の運動機能かどうか、平衡機能に異常がないかを確認します。その後、聴力チェックで内耳の障害を調べたり、回転検査、前庭眼反射などいつかの検査を組み合わせたりして原因を探っていきます。
次に、年齢によって推定できるめまいを起こす病気をご紹介します。
てんかん、内耳の奇形、小児良性発作性めまい、脳腫瘍、急性小脳失調症、髄膜炎
起立性調節障害、心因性のめまい、片頭痛に伴うめまい
外リンパ瘻、先天性真珠腫、ウイルスによる内耳炎、前庭神経炎
お子さんのめまいで、一番多い病気は「起立性調節障害」です。
学童期や思春期に起こりやすい病気で、原因は自律神経の機能障害です。
起立性調節障害は、身体の発育に比べて循環器系や自律神経系などの機能の発育が未熟なために、急に立ち上がった際に、頭蓋内への急速な血液供給が間に合わない場合に発症します。
いわゆる脳貧血状態です。
症状は立ち上がった時の眼前暗黒感、グラグラするめまいや立ちくらみ、吐き気、頭痛、腹痛――などです。
起立性調節障害は、学校生活や家族関係などによるストレスなどの心理的な問題が発端になるとされています。
調子が悪くなるのは午前中や入浴後ということが多く、「嫌なことを見たり聞いたりすると気持ちが悪くなる」といった特徴があります。
症状が軽い場合なら、自然に治ることも珍しくありませんが、症状が重かったり長引く場合は、薬物治療や心理療法が必要になります。