めまいは、平衡感覚をつかさどるさまざまな器官の障害で起こり、治療する診療科も耳鼻咽喉科をはじめ脳神経外科や神経内科、内科、心療内科、婦人科とさまざまですが、めまいの患者さんの約6割が耳鼻咽喉科で診察する「内耳性めまい」といわれています。
ここでは、主に耳鼻咽喉科で診察する「めまい」の病気について説明します。
良性発作性頭位めまい症は、ある一定の頭の動きで突然に起こる回転性のめまいで、1分ほどで治まりますが、時には嘔吐(おうと)感を感じるほどの強いグルグルめまいを感じるため、恐怖を感じる方もいます。
ある人は寝返りをうつ、ある人はベッドから起き上がる――というように、日常生活のごくごく普通の頭の動きでめまいが起こります。
めまいが起こる動きが、患者さんごとに決まっているのも特徴です。良性発作性頭位めまい症は、2週間から1カ月で治ることが通常です。
良性発作性頭位めまい症の原因は、内耳にある3つの半規管(はんきかん)の中の浮遊物です。
耳は、音を聴くこと以外に体の平衡を保つ働きの一部を担っていますが、まず、この体を平衡に保つ働きのメカニズムを簡単にご説明します。
耳の奥の内耳にある3つの半規管と耳石器(じせきき)はリンパ液で満たされていますが、頭を動かすとこのリンパ液に流れが生じ、これが信号となって脳に伝わります。
この信号を受取った脳は、身体を平衡に保つように全身の各部分の筋肉へ指令を出します。その指令を受取った筋肉はそれに従うことで、身体は平衡に保たれる――というわけです。
頭を動かすと浮遊耳石が移動してめまいが起こります。
浮遊耳石が半規管の一番低い位置で停止すると、めまいは治まります。
良性発作性頭位めまい症は、3つあるうちのある半規管の中のリンパ液の流れが何かで乱されて起こると考えられています。
最も多いのは、耳石器から剥がれて半規管に入り込んで浮遊している耳石で、半規管結石(はんきかんけっせき)と呼ばれます。
半規管結石があると、頭を動かした時に、通常のリンパ液の流れのほかに浮遊している半規管結石が動くことによる流れも起こるため、正常なリンパ液の流れが乱れてめまいが起こります。
そして、この浮遊した半規管結石が半規管の一番低い位置で停止すると、めまいは治まります。これが、良性発作性頭位めまい症の特徴である1分ほどで治まるめまいの正体です。
また、剥がれた耳石が半規管内に沈着した場合もめまいは起こります。
梅華会グループ理事長
梅岡 比俊
どんなめまいだったのかを医師に伝えることは診断をつけるためにはとても重要です。とはいえ、診察を受ける時はめまいが治まっている場合がほとんどです。
医師は主に次のような点を伺いますので、受診までにできるだけ思い出しておきましょう。
梅華会グループ理事長
梅岡 比俊
体の平衡感覚を調べます。
良性発作性頭位めまい症の患者さんは、ある決まった方向に頭を動かさない限り平衡感覚機能に異常はありませんので、他の病気でないことを確認するためこの検査を行います。
眼球の揺れ方を見ます。
めまいを起こしている時は、眼振という眼球の不随意運動が見られることが多いので、この検査をします。
良性発作性頭位めまい症の場は、めまいが起こってから数秒後に眼球が動くことが確認されますが、受診時にはめまいが治まっていることがほとんどですので、めまいを起こした時と同じ姿勢をとってめまいを引き起こして確認します。
良性発作性頭位めまい症では、めまいの起こる姿勢を繰り返すうちに、徐々にめまいを感じなくなる「慣れ」が生じることが知られています。
そこで、医師の指導でめまいを起こす姿勢を繰り返して「慣れ」を導く運動療法が行われます。
良性発作性頭位めまい症のめまい発作は、ほとんどの場合1分程度で治まってしまうので、発作そのものに対する薬物治療は積極的には行いません。
内耳の機能を改善する目的で、抗めまい薬や循環改善薬を補助的に処方したり、めまいに対する恐怖心が強い患者さんには、抗不安薬を処方することがあります。
良性発作性頭位めまい症は、めまいの約40%を占める一番多いめまいの病気ですが、適切な治療と指導により、うまく慣れることができれば症状は軽快するので、比較的治りやすいめまいと言えます。
そこで、めまいへの恐怖心が生まれ、生活への支障が出る前に医師の診断を受けてください。