一度症状は消えても再発するめまい、治療で軽減されるものの長引くめまいに「このめまいは治るのでしょうか?」――多くの患者さんがご質問されることです。
日常生活に支障をきたすような重度のめまいでも、正確に検査を行って適切な治療を行えば、ほとんどの場合は治るか、少なくとも症状は軽減し普通に生活を送ることができるようになります。
治るまでに長期間かかるめまいもありますので、根気よく治療を続け、医師から伝えられた日常生活上の注意を守ることが大切です。
脳血管障害の疑われる「手足がしびれる」「ろれつ・・・が回らない」「物が二重に見える」などの神経症状が無ければまずはあわてずじっと安静を保つのが原則です。
激しいめまいがするとほとんどの方はあわてて、そして強い不安感を持ちます。
無理に動くとめまいが治まらないばかりか、転倒してしまうおそれもあります。そこで、まずは落ち着いて症状の軽減を待ってから受診してください。
次に、症状が落ち着いてからの受診で原因が分かるか――についてですが、その時点で症状がなくて、検査でも異常が認められなくても、めまいの起こり方、めまいの様子、めまいのくり返し具合、めまいの続く時間などを問診で伺うことで、めまいの原因を絞り込み、治療を開始することは十分可能です。
そして、治療による経過を観察しながら、確定診断を行います。
めまいに脳血管障害の疑われる「激しい頭痛」「意識障害がある」「手足がしびれる」「ろれつ・・・が回らない」「物が二重に見える」などの神経症状が伴う場合は、一刻を争います。
救急車を呼んで、脳神経外科か神経内科のある病院へ行ってください。
また、内耳の障害が原因のめまいも命の別状はないものの早期の治療が早い回復につながります。
激しい発作症状が治まったら、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。
まずは、転倒によるけがを防ぎましょう。
あわてて動こうとせず、その場にしゃがんでから静かに横になってください。
この時、頭を動かすとめまいが強くなったり、治まりかけためまいが再び起こったりすることがありますので、できるだけ頭を動かさないようにしましょう。
横になってめまい症状が軽減して、歩ける程度になったら、医療機関を受診してください。
まず、疑われるのは耳鳴りや難聴という耳症状は伴わず、めまいと吐き気・嘔吐症状を呈する前庭神経炎です。
前庭神経炎は、前庭神経になぜ炎症が起こるのかは、今のところはっきりと解明されていません。
しかし、めまいが起こる数日前くらいから、あるいはその時に風邪をひいている方が少なくないことから、ウイルス感染が原因とする説があります。
めまいが生じる病気のなかで遺伝が関係するものがいくつかあります。
神経線維腫Ⅱ型、前庭水管拡張症は遺伝することで知られ、めまいを引き起こす可能性のある病気です。
また、母子間の体質や家庭での生活環境がめまいに関係するものと思われます。
例えば、両親あるいはどちらかに自律神経失調症や片頭痛がある場合、やはりお子さんにめまいがおこりやすい状況にあると考えられます。
通常、めまいの治療は薬物療法や運動療法が主となります。
しかし、メニエール病は、薬を飲んでも発作をくり返し難聴の度合いも進んでいくようであれば、手術による治療を選択することもあります。
メニエール病の手術の方法には2つの方法があり、一般的なのが「内リンパ嚢(のう)開放術」という方法で、内リンパ水腫を起こしている嚢に穴を開け、中にたまった水分を排出します。
もう1つは、前庭神経切断術と呼ばれる方法で、平衡感覚をつかさどっている前庭神経を切断し、めまいの症状を改善する方法です。
また、外リンパ瘻の場合も手術を行います。
外リンパ瘻の手術は、試験的鼓室開放術という病気の確定診断を兼ねて行う内耳閉鎖術という手術で、外リンパが漏れている内耳窓の穴を閉鎖する手術です。
なお、聴神経腫瘍もめまいを起こす病気ですが、脳神経外科による手術や放射線治療を選択します。
まず、めまいを起こした時の姿勢や状況を把握して、そういった状況をつくらないことが大切です。
また、めまいの患者さんに共通しておすすめの日常生活上の注意点は、
1.十分な睡眠と休息
2.ストレスを避ける工夫や適度の運動などによる気分転換
3.禁煙――などです。
必要以上にめまい発作を恐れることも、再発の原因となります。
あまり神経質にならずに、スローライフを楽しむことも、めまいを克服するうえで大切なポイントです。
めまいに限らず、健康を保つためには適切な食事、運動、睡眠が必要ですが、めまいを予防する上でも、暴飲暴食を避けて栄養バランスのとれた適量の食事を規則正しくとることが何よりも大切です。
特別、めまいに良いという食べ物はありませんが、血流改善、疲労回復、貧血予防としてビタミンB1・B2・B6・B12 などのビタミンB群、ビタミンC、ビタミンE、青魚などに含まれるαリノレン酸・エイコサペンタエン酸、トリプトファン、マグネシウム、亜鉛、鉄などを含む食事が考えられます。
また、内耳のアンチエイジングに関する研究によれば、ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10などの抗酸化物質とお茶の成分であるカテキン、ブルーベリーなどに含まれるアントシアニン、赤ワインに多いタンニンなどのポリフェノール摂取が内耳の保護に有効とされています。
とはいえ、何事も過ぎたるは及ばざるが如しですから、適量を守り、摂り過ぎには注意してください。
り過ぎと言えば、めまいに関して摂り過ぎを控えた方が良いものとして、塩分があります。
塩分は高血圧の敵ですし、メニエール病では内リンパ水腫を悪化させるとされています。
また、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などの生活習慣病はめまい発症にかかわっていますので塩分に加えて、糖分、動物性脂肪も控えめにしましょう。
コーヒー、チョコレートなどに多く含まれるカフェイン、インスタント食品に含まれている亜鉛吸収阻害作用をもつフィチン酸も摂り過ぎは良くありません。
次に皆さん気になるタバコやアルコールですが、タバコは含有成分のニコチンが血管を収縮させる作用があるので、内耳の血流障害を助長します。
めまいに禁煙は必須です。
アルコールは、急性のめまいやめまいの急性期にはもちろん飲んではいけません。
メニエール病の原因の1つであるストレスの解消という目的で、適度の飲酒をするのであれば問題ないと思います。
なお、ここでは一般的なことを申し上げました。
食事に関しては患者さん個人個人で指導内容が異なりますので、主治医に相談してください。